日帰り前立腺針生検はじめました/大林広輝
こんにちは。大林です。
2022年12月より前立腺針生検をはじめました。
今回は当院で行っている前立腺針生検についてご説明したいと思います。
前立腺針生検の一般的な内容を、
三木先生が2022年11月のコラムで紹介していますので、
そちらもご参照ください。
前立腺針生検は、
肛門と陰嚢の間である会陰から前立腺に針を刺す方法 (経会陰式)と
直腸から前立腺に針を刺す方法 (経直腸式)の
2種類があります。
当院では経会陰式を採用しています。
それぞれの方法のメリット、デメリットは表の通りです。
経直腸式のデメリットとして、
直腸にいる便の細菌が
針を刺したときに前立腺へ感染することがあります。
感染すると高熱が出て、全身のだるさがみられます。
重篤になると全身に細菌が回り臓器が機能しなくなる敗血症になるため、
とても注意が必要です。
経会陰式のメリットとして
皮膚を通して前立腺に針を刺すため、ほとんど感染しないということがあげられます。
そのため当院では経会陰式を採用しています。
また経直腸式では生検しずらい部位でも経会陰式では生検することが可能です。
痛みについてお話すると
経会陰式の場合は経直腸式と比べて痛みが強い傾向があります。
そのため、経会陰式ではしっかり痛みを抑える麻酔として、
脊椎麻酔が必要な場合がほとんどです。
一般的に脊椎麻酔を行うと下半身全体に麻酔がかかるので入院が必要となります。
しかし当院では
脊椎麻酔の中でも会陰部にだけ麻酔の効果が出るサドルブロックを採用して、
麻酔の時に使用する薬剤を極力少なくすることで、
日帰りで前立腺針生検を行うことが可能です。
(自転車のサドルがあたる部分に麻酔がかかることでこのような名称となっています。)
もちろん痛みはありません。
薬剤の量を少なくすることで患者さんの体にかかる負担が減り、
入院せず日帰り検査となるため医療費を抑えるメリットもあります。
2023年1月時点で
3件の経会陰式前立腺針生検を行いましたが、
安全に精度の高い検査を行うことができました。
現在、当院での前立腺針生検をご希望する患者さんがとても増えてきております。
日帰りで前立腺針生検をご希望される方がいらっしゃいましたら、
ぜひ当院での検査を検討されてみてください。
ダイエットにおける食事管理/大林広輝
ダイエットの成功のカギは
「毎日体重計に乗ること」と
「睡眠を取ること」
が大切であると前回お話させていただきました。
今回は具体的な食事管理についてお話したいと思います。
食事管理のポイントは2つです。
カロリー計算を理解する
自分にとって簡単だと思うものを見つける
1つずつ説明していきます。
みなさんはダイエットの時にカロリー計算を活用していますか。
体重1kgを減らすには7000kcalを消費する必要があります。
ご存じだったでしょうか。
カロリー計算を知らなければ具体的な目標を決められませんから、
とても重要になります。
基本となる栄養素1g当たりのカロリーは、
たんぱく質が4kcal、炭水化物が4kcal、脂肪が9kcalになります。
30~50歳台の女性の1日の必要カロリーは2000kcalです。
1日に推奨される摂取すべき栄養素を考えると、
たんぱく質300kcal(75g)、炭水化物は1200kcal(300g)、脂質は500kcal(56g)になります。
出典:厚生労働省 日本人の食事摂取基準(2020年版)
これらのカロリー計算の基本を念頭に、
自分なりの減量イメージを持ってみましょう。
次にダイエットで重要なことは
「自分にとって簡単だと思うものを見つける」
ということです。
ダイエットの基本は食事量を調整することと運動です。
例えば1カ月で1kg減量するには1日に250kcal余分に減らす必要があります。
食事で考えるとたんぱく質の量は維持すべきですから、
炭水化物と脂質の量を減らしてダイエットしていく方法がよいでしょう。
運動では30分のウォーキングで100kcal消費することができます。
あとは減らすべき250kcalを自分にとってやりやすい方法を考え、
組み合わせるだけで大丈夫です。
炭水化物100kcal、脂質50kcal、運動100kcalでもよいでしょう。
食事だけ考える場合は炭水化物150kcal、脂質100kcal減らすことにして、
ダイエットを進めてもよいと思います。
正解は何通りもあります。
ダイエットを継続するには楽しむことがコツです。
自分でダイエットメニューを考えると楽しむことができますから、
ぜひ挑戦してみてください。
楽しくなるとコンビニで買う食材ごとに
カロリーやたんぱく質、炭水化物、脂質の
それぞれの量がどうなっているのか気になって、見るのがクセになりますよ。
またダイエットを行う上で知っておくべき重要なことは、
停滞期が必ずくるということです。
2~4週間で停滞期がくると言われています。
これは体の代謝や筋肉量が落ちることが原因と言われています。
停滞期では今まで通りダイエットしても1~2週間、体重が減りません。
しかし、停滞期が過ぎると再度体重が減ることを知っておくだけで、
そこで諦めず乗り越えていくことができますよね。
最初は簡単な目標設定すると長く継続することができますから、
ぜひ試してみてください。
次回は過活動膀胱のくすりについてお話します。
「梅毒」が急増、症状無く進行する性感染症/院長 岸本幸一
こんにちは。院長の岸本です。
令和五年、新年明けましておめでとうございます。
今年はコロナ感染が昨年より落ち着くことを願っています。
本年もよろしくお願いいたします。
前回の医師コラムで、成医会での発表についてお伝えしていましたが、
コロナ感染状況の拡大に伴い、残念ながら会が中止となりました。
来年こそ発表に臨みたいと思います。
さて、2022年は梅毒が急増しており、
1999年に感染症法が改正されて以来、最大の患者報告数となっています。
当医院のある千葉県も例外ではありません。
千葉県HPより
実際、私たちのかしわ腎泌尿器クリニックでも、
梅毒の患者さんが急激に増えているのを実感しています。
最新かつ的確な治療を施すために、
当院では毎週
医師達が治療や検査、新しい医療情報、
病状が心配な患者さんについてカンファレンスを行うのですが、
今回は梅毒の治療法について、最新の知見を含め、熱く話し合いをしました。
梅毒は、コンドームを使用しないセックスや、
オーラルセックスで感染する性感染症です。
初期には、性器や口などに数ミリのできものが現れますが、
自然に消えてしまい、自覚がないまま進行します。
そして、症状も多彩で、他の疾患と区別がつきにくく、
「偽装の達人」とも呼ばれています。
梅毒の確実な診断は、採血によるRPRの検出ですが、
明らかに梅毒の所見がある場合、初診時に検査をするとともに、
医師の診断により治療も開始しています。
治療法は、飲み薬と注射があります。
今まで日本では、梅毒の治療は「アモキシシリン」という抗生剤の飲み薬を
1日3回、約4週間、内服することが多かったです。
しかし!
2022年1月から、ベンジルペニシリンベンザチンの筋肉注射製剤が発売されました。
実は世界では圧倒的にこの治療法が第一選択の治療になっています。
この注射薬は、水溶性が低く、
筋肉内で2~4週間かけてゆっくり全身へ放出されていきます。
13歳以上の成人には病気の進行度により、
早期の梅毒でしたら、1回おしりに注射するのみ、
後期の場合には週に1回、計3回の筋肉注射をしていきます。
もともとこの薬は内服薬としては、
「バイシリンGr」という名前で既に発売されていましたが、
今回梅毒の治療薬として発売されたのは、注射です。
梅毒の治療薬としては40年ぶりの事です。
ただし、ワーファリンなど血液サラサラの薬を内服していたり、
腎機能が低下していたりする患者さんには注意しながら投与をしていきます。
また、ペニシリンアレルギーのある方には禁忌のため、使用できません。
当院でも注射での治療を行っています。
注射後は副作用の観察のため、しばらくは様子を見させていただきます。
慎重に新しい治療を始めましたが、
今のところ副作用が出現した方はみられていません。
飲み薬は1日3回4週間と長期にわたり服用しなければなりませんが、
この新しい薬は1回の注射治療で終了するため、簡便です。
飲み忘れの心配もありません。
しかし、
注射による痛みが伴う事、
内服薬同様 副作用もあり得ること、
また
内服薬(3割負担だと薬代は約600円+診療費や検査代)よりも
注射薬は高価(3割負担だと薬代は約3000円+診療費や検査代)のため、
患者さんと十分話し合いながら治療を進めていきたいと思います。
まだまだ新しい注射薬の治療を取り入れている医療機関が少ないようで、
時々患者さんからお電話で問い合わせがあります。
注射で治療をご希望の場合は、是非一度 クリニックでご相談ください。
梅毒の症状がない、でも感染に心当たりが、、という方は
柏市の保健所でも無料匿名で検査をしてくれます。
梅毒は治療しなくても、一度治ったようにみえてしまう、
やっかいな病気です。
病院に行きづらいこともあり、
そのまま放置してしまう方も多いかと思います。
が、
自分だけではありません。
相手にもうつしてしまいます。
妊娠している人が梅毒に感染すると、
胎盤を通して胎児に感染し、
死産、早産、新生児死亡、奇形が起こることがあります(先天梅毒)
きちんと治療すれば必ず治すことのできる病気です。
どうぞ安心してご相談ください。
一緒に治していきましょう。
★成医会で発表します/院長岸本幸一
こんにちは。院長の岸本です。
11月下旬になり、朝晩の冷え込みを感じるようになりました。
さて、当クリニックでは、
私とスタッフが協力しながら日々様々なデータをまとめています。
病名や年齢、病期のステージ、治療法、治癒までの時間など
様々なデータをエクセルに入力していきます。
看護スタッフも事務スタッフも空き時間を見つけては、
毎日入力してくれ、
迅速で正確なデータが集まるようになりました。
私は朝8時過ぎから診療前までの朝の日課として、
データまとめをしています。
それらを集計して分析し、毎週のスタッフカンファレンスで発表して、
患者さんへよりよい治療が出来るように努力しています。
この集めたデータを分析して患者さんに還元していくことが大事なんですね。
このたび、2022年12月3日(土)14時から、
慈恵医大柏病院の成医会にて、
日々まとめているデータの一部を発表させていただく機会を持ちました。
題名は、
「かしわ腎泌尿器クリニックにおけるがん地域連携」
です。
前立腺患者さんの来院数や平均年齢、病期のステージ、
PSAの値についてなどのデータを多角的な視点で集め、
分析し、とりまとめました。
発表当日は非常勤の先生に診療をお任せし、
看護師、事務員スタッフと共に全力で発表してきます。
前立腺針生検:前立腺がんの確定診断/三木淳
みなさん、こんにちは。
前回は、採血のPSA検査で
前立腺がんが予測できるということについてお話しました。
↓
今回は、PSA検査や直腸診などで前立腺がんが疑われた際、
確実にがんを診断する確定診断の方法、
前立腺針生検(はりせいけん)についてお話しします。
現在の医学において、エコー、CT、MRIなどの画像検査が発達とともに、
多くのがんが画像検査でみつかるようになりました。
しかし、それら画像検査は
あくまでがんを強く疑うという段階までの判断です。
最終的に、がんの確定診断は、
がんが疑われる組織を一部採取する「生検」と、
その生検で得た組織を顕微鏡で正常か悪性(がん)かを
専門の病理医によって判断する「病理診断」によって行われます。
実際、前立腺がんの診断にMRI検査が有用とされていますが、
MRIで診断できない前立腺がんも多く存在します。
われわれ泌尿器科医は、PSA値や直腸診などを含めて
複合的に前立腺がんが疑われた場合、
前立腺生検を行い前立腺がんの確定診断をします。
具体的な前立腺針生検の方法を解説します。
前立腺は肛門から指を入れると、お腹側に触れる部位に存在します。
前立腺がんの大きさや進行度によっては、
この直腸診により硬いがんを触れることもあります。
針生検は、肛門からエコーで前立腺を確認しながら、
直腸(お尻の穴の奥)、もしくは会陰(えいん、肛門と陰のうの間の皮膚)から
穴のあいた特殊な針をさして、針の中に組織を採取してきます。
みなさんがもっとも心配されるのは、生検時の痛みでしょう。
施設によっては、痛み止めのゼリーだけを使用して生検を行っていたため、
肛門の痛みを感じる方も一定数おりました。
当院では、2022年12月から経会陰的前立腺針生検を行いますが、
腰椎麻酔でしっかり痛みを取り除いた状態で生検を予定していますので、
ご安心いただけると思います。
麻酔のあと、生検は約10-20か所採取するのですが、
時間は10-20分程度で終了します。
生検の合併症ですが、一番多いものは出血で、
尿、精液、便に血が混じるというものですが、
数日から1か月程度で徐々におさまります。
他に、尿が出なくなる(尿閉:にょうへい)や発熱があげられます。
発熱は前立腺に菌が入り、急性前立腺炎となることが原因です。
多くは予防的な抗生物質で発症を予防できますが、
1-3%程度の割合で全身に菌が回る
敗血症(はいけつしょう)という重篤な感染症になる危険があり、
その場合は入院での抗生物質治療が必要になり、注意が必要です。
当院では、直腸からの生検よりも
こうした感染のリスクが低いとされている会陰からの生検を行います。
こうした発熱や尿閉がなければ、検査当日から通常の生活は可能で、
当院では日帰り生検を実施します。
約2-3週で生検結果はわかりますので、次回の外来で結果をお話しいたします。
このように、PSA検査で異常値であった場合、
前立腺針生検という精密検査が行われますが、
ご安心して検査をうけていただければと思います。